業務標準化で属人化を解消!できる社員のノウハウを組織の力にする

主担当と副担当が協力して業務を共有化する様子
仕事の見える化を進めることは全社的に必要。モチベーションにもつながる。

業務の標準化を進める第一歩は、組織内で情報やタスクをオープンにする「業務の共有化」です。部門や個人の垣根を越えてノウハウを共有できれば、チーム全体の連携がスムーズになり、迅速で的確な意思決定が可能になります。

情報が透明化されると社内コミュニケーションが円滑になり、全体の生産性や業務品質の底上げにつながります。

さらに、組織全体でベストプラクティスを共有し合える仕組みが整えば、継続的な業務改善とイノベーションが促進されます。結果として企業の競争力が高まり、持続的な成長を実現できるようになります。

仕事は属人化から共有化へ!業務標準化が求められる理由

本記事では、いわゆる「できる社員」のやり方を組織全体の共通スキルへ落とし込み、誰でも成果を出せるようにする業務の標準化の手法を解説します。

働き方改革において、有給休暇の取得促進や残業時間の削減が注目されがちです。しかし、改革の本質は「仕事の進め方そのものをどう見直すか」にあります。

変化の激しい現代ビジネスにおいて企業が成長し続けるためには、個人の勘や過去の成功パターンに依存した古い働き方から脱却しなければなりません。

特定の社員しか業務内容を把握していない「属人化」の状態では、担当者の急な休暇や退職時に業務が停滞し、チームの生産性を維持できなくなります。

「特定のエース社員にばかり過度な負荷がかかっている」「急な休みがあると現場が回らない」とお悩みの経営者や管理職の方は、ぜひ参考にしてください。

できる社員の仕事を因数分解してナレッジを抽出する

業務標準化を成功させる鍵は、エース社員が持つスキルや判断基準を細かく要素分解し、誰でも実践できる形に言語化することです。

できる社員のスキルや業務プロセスを因数分解して分析する様子

「できる社員の仕事を因数分解する」とは、その社員が持つ卓越したスキルや経験、判断基準を細かく要素に分解し、成果が出る構造を解き明かす取り組みです。

具体的には、「どのような場面で、どんな判断を下しているか」「どの工程にどんな知識が必要か」を明確に整理していきます。

仕事を要素ごとに分解できれば、その社員の強みが可視化されるだけでなく、他のメンバーに対する具体的なトレーニングや支援策を設計しやすくなります。

個人の能力を組織全体の共有資産として活用することで、チーム全体の底上げと業績向上につながります。

項目説明
スキル社員が持つ特定の能力や技術。例えば、プログラミング、コミュニケーション、リーダーシップなど。
経験社員が過去にどのようなプロジェクトや業務に携わり、どれだけの経験を積んできたか。
知識社員が持つ特定の分野や業界に関する知識。例えば、法律、マーケティング、製品開発など。
モチベーション社員が業務に対して持つ意欲や熱意。
コミュニケーション社員が他のチームメンバーや関係者と円滑にコミュニケーションを取る能力。
問題解決能力社員が問題を発見し、分析し、効果的な解決策を見つける能力。

能力の個人差が業務の属人化を生む

業務が属人化してしまう根本的な原因は、社員同士の知識やスキルの個人差にあります。

仕事ができる社員にタスクが集中すると、他のメンバーへ仕事を分担できない悪循環が生まれます。これを解消するには、できる社員の取り組み方を因数分解し、成果が出るプロセスをナレッジとして部内に共有することが不可欠です。

「ノウハウを教えたくない」と反発されたら?

成果を出す優秀な社員ほど、すべての工程を一人で完結させてきた自負があります。営業担当であれば、新規開拓からクロージングまで自力で行うことで、自身の評価を確立してきた側面もあるでしょう。

そのため、自分の仕事を分解され、培ったノウハウを他人に共有することに対して抵抗感や不安を覚えるのは自然なことです。

しかし、「その人にしか任せられない」状況が続けば、本人の長時間労働や休暇の取りづらさを招き、組織運営上も大きなリスクとなります。業務の標準化は本人を守るためでもあるという点を、丁寧に伝える必要があります。

業務の標準化は、できる社員自身にも大きなメリットがあります。ノウハウの共有によって後輩や同僚が育ち、通常業務を任せられるようになれば、本人はより難度の高いプロジェクトや企画など、高付加価値なコア業務に集中できるからです。向上心の高い社員には、自身のキャリアアップにつながる点を強調して説得しましょう。

標準化可能な業務の見極めはどうする?

業務を因数分解した後は、どの工程から標準化できるかを仕分けていきます。見極めの基準は「可視化できるかどうか」です。

具体的には、文書(マニュアル)や図(フローチャート)として手順を落とし込める業務から優先的に抽出します。

手順が可視化されれば、チーム内でお互いの業務をカバーし合える体制が整います。担当者が不在でもスムーズにフォローできるようになり、有給休暇も気兼ねなく取得できるようになります。

□属人的な業務の放置は組織運営上の重大なリスクになる
□業務の標準化によって「できる社員」は高付加価値な仕事に注力できる
□標準化できる業務の見極め基準は「マニュアルや図で可視化できるか」
□ナレッジの共有と相互フォローが休暇取得のしやすい環境をつくる

あらゆる業務をチーム制で行う仕組みづくり

業務の属人化を防ぐためには、仕事を個人に割り振るのではなく、チーム単位で遂行する体制へのシフトが必要です。

複数のメンバーで構成されたチームで業務を進める様子

業務のチーム制とは、個人単位ではなく複数人のチームを基本単位として業務を進める体制のことです。

メンバー同士で役割分担や相互補完を行いながら共通の目標に向かうことで、1人では出せない高い成果を生み出せます。

チーム内でナレッジが共有され密なコミュニケーションが取れるようになると、難度の高いトラブルや課題にも組織力で対応できるようになります。多様な視点が交わることで新しいアイデアも生まれ、生産性も向上します。

業務の大小に関わらず、組織的に仕事を進める体制を整備しよう

1人の社員が単独で案件を抱え込む体制では、その社員が体調不良や休暇で不在になった瞬間に業務が完全にストップしてしまいます。

担当者自身も責任感から休みを取りづらくなり、働き方改革の推進を妨げる要因になります。業務規模の大小を問わず、最初から組織全体で動かすルールを整えましょう。

主担当と副担当を事前に協議しておく

顧客対応やプロジェクト管理では、必ず「主担当」と「副担当」をペアで配置します。主担当が不在の際は、副担当が即座に指示を出せる体制を作ることが基本です。

注意すべき点は、「主」「副」という肩書によって役割を固定化させないことです。

主担当しか判断を下せない状態のままでは、実質的な属人化は解消されません。どちらが不在になってもスムーズに現場が回るよう、具体的な判断基準や連携手順を事前に協議しておきましょう。

担当役割
主担当特定の業務やプロジェクトにおいて最終的な責任を持つ。
リーダーシップを発揮し、方針を決定する。
チームメンバーの役割分担や進捗管理を行う。
副担当主担当者のサポート役として、特定の業務やプロジェクトに協力する。
主担当者の指示に従い、業務を遂行し、必要に応じてサポートを提供する。
主担当者の決定を補完し、業務の効率性を向上させる。
主担当者は責任者としての役割を果たし、プロジェクトや業務の全体的な進行を管理します。一方、副担当者は主担当者を支援し、彼らの指示に従って業務を遂行し、チームの効率性を向上させる役割を果たします。このような役割分担は、チームの協力と効率性を高め、業務の遂行を円滑にします。

注目されている担当制度

役職とは異なる主担当制とは、従来の組織内の階層的な役職に基づく管理体制ではなく、各個人が特定の業務やプロジェクトにおいて主担当となる仕組みを指します。この制度では、個々のメンバーが自身の専門性や能力に応じて、特定の業務やプロジェクトに責任を持ち、リーダーシップを発揮します。役職に囚われることなく、個々のスキルや貢献度が評価され、必要に応じてプロジェクトや業務の主担当者が柔軟に選出されます。この制度は、チームの効率性や創造性を高め、組織内での自律性と責任感を促進します。主担当制は、従来の階層的な管理体制に比べて柔軟性が高く、個々のメンバーの能力やモチベーションを最大限に活用することができるため、現代のアジャイルな組織運営に適した制度として注目されています。

チーム制導入時にやってしまいがちなミス

チーム制を導入する際に最も陥りやすい失敗が、「チームのメンバーを常に固定してしまうこと」です。

気心の知れたメンバー同士の結束力は高まりますが、今度は個人ではなく「チーム単位での属人化」が起きてしまいます。

同一部署内でA・B・Cの3チームが固定メンバーで動き続けると、チームごとに独自の進め方が定着し、実質的に3通りのやり方が並行して存在することになります。

こうなると、1チームで欠員が出た際に他チームから応援を入れても、進め方が合わずに現場が大混乱に陥ります。結果として適応に時間がかかり、部署全体の生産性が大きく低下してしまいます。

チームのメンバーは流動的に組み替える

チーム単位の属人化を防ぐためには、メンバーの組み合わせを案件や期間ごとに流動的に組み替える仕組みが効果的です。主担当を決めたら、副担当やサポートメンバーは重複しないようにシャッフルしてアサインします。

この流動的なチーム編成は、社内の人材育成にも大きな効果をもたらします。複数の先輩や上司のやり方を学び、多様な案件に携わることで、一人ひとりが多能工型の人材へと成長します。複数の業務をこなせる社員が増えるほど、誰かが不在でも自然に助け合える盤石な組織体制が築かれます。

□個人ではなく組織・チームで仕事を進める体制をつくる
□主担当と副担当の役割を固定化させず、不在時の判断ルールを決めておく
□メンバー固定のチーム制はチーム単位の属人化を招くため避ける
□案件ごとにメンバーを流動的に組み替えて多能工型人材を育成する

助け合いの精神を社内に根づかせる情報共有の仕組み

仕組みを作っても、情報が共有される風土がなければ形骸化してしまいます。日々の進捗を手軽に共有できる環境を整えましょう。

社員同士が助け合って業務を円滑に進める様子

長い付き合いの顧客が業務の標準化を阻害する?

担当者と顧客の付き合いが長期化している案件では、「信頼関係を壊したくない」「細かな経緯は担当者しか知らない」といった理由から、他メンバーが介入しづらくなりがちです。

しかし、一人の担当者に依存した関係性は、担当者の異動や退職の際に顧客との関係自体を失いかねない大きなリスクです。

組織全体でお客様へ価値を提供し続けるためにも、担当者一人による情報の抱え込みを解消し、顧客情報を共有財産として管理する姿勢が求められます。

もっとも導入しやすく、効果的な手法は「作業日報」

情報の抱え込みを防ぐ最も手軽で実効性の高い方法が、作業日報(業務日誌)の全社共有です。担当案件の状況や顧客とのやり取りを日報に記録し、部内全員が閲覧できるルールを運用します。

成功のポイントは、管理職への報告にとどめず、「一般社員同士が互いの日報に目を通す文化」を作ることです。長文を読む必要はなく、同僚が何に取り組み、どんな課題に直面しているかを把握できるだけで十分です。お互いの状況が見える化されることで、自然と声をかけ合いフォローし合う助け合いの風土が定着します。

日報作成はデジタルで行うべし

日報の共有を形骸化させないためには、紙ではなくデジタルツールでの運用が必須です。デジタル化すべき理由は大きく2点あります。

  • いつでも・どこでも迅速に情報共有や検索ができる
  • 出先や在宅勤務先から入力でき、日報作成のためだけの帰社を防止できる

日報を定着させるためには、入力フォーマットをシンプルにし、作成負担を減らす工夫が必要です。日報作成は後回しになりがちな業務だからこそ、選択式や箇条書きを活用し、短い時間で無理なく提出できるルールを整えましょう。

□特定担当者による顧客情報の抱え込みを解消する
□全社で作業日報を作成し、部署全体で状況を共有する
□メンバー同士が互いの日報を軽く確認し合う習慣をつくる
□共有スピードと負担軽減のため、日報はデジタルツールで運用する

業務の標準化と属人化解消に関するよくある質問

業務の標準化や属人化の解消に取り組む際、よくある疑問とその解決策をまとめました。

Q
できる社員がノウハウの共有を嫌がる場合はどう説得すべきですか?
A
ノウハウを標準化して周囲に共有することで、通常業務を後輩に任せられるようになり、本人はより高付加価値な企画や重要業務に集中できるというメリットを伝えて納得してもらいましょう。
Q
標準化できる業務を見極める基準は何ですか?
A
マニュアルとして文書化できるか、フローチャートとして図形化できるかといった「可視化できるかどうか」を基準にして抽出するのが効果的です。
Q
チーム制を導入しても業務が属人化してしまう原因は何ですか?
A
チームメンバーを固定してしまうと、チーム単位でのやり方の違いや属人化が発生します。案件ごとにメンバーを流動的に組み替えて多能工型人材を育てることが重要です。

まとめ:業務の標準化と各社員への価値伝達

できる社員のノウハウをベースに業務の標準化を進めると、「誰でも同じ仕事ができるなら、自分がいる意味はあるのか」と自己の存在意義に不安を感じる社員が出てくることがあります。

標準化の目的は社員を代替可能な駒にすることではなく、全員が安心して力を発揮し、より付加価値の高い仕事へ挑戦できる組織を作ることです。

標準化を推進する際は、各社員に対して会社がどのような貢献を期待しているのかを一人ひとりに明確に伝え、モチベーションを高めながら組織改革を進めていきましょう。

この記事のポイント

・できる社員のやり方を因数分解し、可視化できる業務から標準化を進める
・主担当・副担当制を敷き、メンバーを流動的に組み替えて多能工化を図る
・デジタル作業日報を活用し、部署全体でお互いをフォローし合える文化を根づかせる

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