管理職の意識改革を進めて休暇取得を向上させよう

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管理職の意識改革

本記事は、会社の労務部門や管理職の方を対象に休暇を使った社員の意識改革をテーマに対策をまとめた記事です。働きすぎ社員は、ブラック企業の代名詞になる恐れをはらんでおり、ワーク・ライフ・バランスを意識することが大切です。

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管理職の意識改革と休暇の取得

管理職の意識改革とは、有給休暇の取得促進において極めて重要な課題です。なぜなら、管理職は部下の勤務状況を直接管理しており、その姿勢が休暇取得の実態に大きな影響を与えるからです。

具体的には、以下における意識改革が求められます。

・有給休暇は従業員の権利であり、適切に取得させることが管理職の責務であるという認識

・休暇取得は休息を促し、結果的に生産性の向上につながるというメリットの理解

・部下のワークライフバランスを重視し、プライベートの時間の確保を支援する姿勢

・業務の効率化や適切な人員配置により、休暇取得に伴う職場の人手不足を解消する努力

・休暇取得に前向きな部下を高く評価し、他の模範とする風土の醸成

管理職一人ひとりがこうした意識を持つことで、部下が安心して休暇を取得できる職場環境が整備され、従業員の健康維持やモチベーション向上、ひいては優秀な人材の定着にもつながります。経営層から現場の管理職まで一体となった取り組みが何より重要なのです。

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ワーク・ライフ・バランスのワークに比重が傾いた社員は?

働き方改革の意識が低く、休暇をとらない管理職社員には、そもそも長時間労働を問題と思っていない可能性があります。リモートワークやAIツールなどの導入で、働き方が新しくなっている現在、そのような社員が多い会社は、社会的な信用を失う可能性があります。

ワーク・ライフ・バランスの意識が低い社員は、人生において仕事以外の価値を見いだせていないのかもしれません。「退社後、やりたいことがあるわけでもない」と考えている社員は、その代表とも言えるでしょう。これは、ワーク・ライフ・バランスの「ワーク」に比重が偏っているためです。

つまり、こうした仕事人間の意識改革のポイントは、休み方の質を上げて「ライフ」の比重を増やすところにあります。

働きすぎ社員が会社の信用を失う要因になりうる

働きすぎ社員
仕事を楽しむのはいいのだが、働き過ぎは非効率化にもなりかねない。

長時間労働を苦にしない社員は会社の社会的信用を失う隠れた存在です。過労死やパワハラなどにつながるとも言えるでしょう。それは、たとえ本人が長時間労働でも構わないと考えていたとしてもです。

頑張る社員に隠れたリスクがある?

頑張りすぎる社員の隠れたリスクで最も大きなものは、該当社員の健康障害リスクです。体力に自信があるといっても、蓄積された疲労がいつ表面に現れるのか、それは本人にもわかりません。体調不良、精神的不調によって業務中に怪我をしたり、休職した場合、会社側に責任を問われる可能性は十分に考えられます。

人材採用にも不利な長時間労働

また、対外的な企業イメージも損なわれるリスクがあります。社員本人の意思で長時間労働が行われていたとしても、事情を知らない社外の人は違った印象を持つでしょう。「長時間労働を容認する会社だ」、「業務分担や時間配分のマネジメントが下手な会社だ」などです。このようなネガティブな印象が、人材採用や会社間の取引などに影響を及ぼすのは言うまでもありません。

そこで、長時間労働を苦にしない社員に対しても、教育・研修や啓蒙活動などを通して、ワーク・ライフ・バランスの重要性をしっかりと理解してもらうようにしましょう。伝える内容は、長時間労働による仕事効率の低下や健康障害のリスク、仕事以外の時間の重要性などです。

全社員に健康管理の周知を徹底的に行う

健康管理については、全社員に徹底的に周知することがおすすめです。というのも、健康障害リスクの回避には、社員一人ひとりの自発的な協力が不可欠だからです。

同じ労働時間でも、ハードな業務のほうが疲労が溜まりますし、スタミナの個人差によって疲れの度合いも違います。また、家事をする社員としない社員では、家事をする社員のほうが睡眠時間は短くなるでしょう。さらに、高血圧や糖尿病など持病を抱えた社員は、そうでない社員に比べて疲労を抱えやすくなります。

このように、健康に働ける労働時間は個人によって異なるため、会社や上司による一元的な管理は現実的に困難です。健康障害のリスクを回避するためにも、社員それぞれの自己管理は欠かせないのです。

長時間労働の是正に向けた社員の意識付けと平行して、仕組みも適した形に変えていくべきです。例えば、所定外労働時間や年次有給休暇の個人目標を設定し、その達成度合いを人事評価に反映させましょう。個人目標を設定は、本人のモチベーションや担当している仕事量、質、裁量度を考慮したうえで行うようにします。

社員の意識改革は社風変革に通じる

社員の意識改革

社員の意識を変えるには、そもそも論としての社風を変えることに通じます。社風は時間をかけて築かれるものである一方、目指すべき方向が明示されていないと生まれようがありません。つまりスタートからゴール設定までの道筋を立てることがポイントと言えます。

意識改革の必要性を認識するのが大切

せっかくワーク・ライフ・バランスの研修を行っても、研修をすることが目的になっては意味がありませんし、社内通達を行っても結果を検証する機会がなくては意味がありません。

休み重視社員の意識を変えることは、風通しの良い企業に変え、社風を変えるきっかけにもなります。意識変革は概ね以下のプロセスになります。

社員の意識を変える5つの取り組み

□社長が考えていることを共有できる仕組みをつくる→トップのコミットメントアナウンス
□経営戦略の中に明確に組み込む→会社の方向性を示唆
□自発的行動につながる仕組みをつくる→評価システムや組織改変
□仕事時間と効率化などを具体的な目標(ゴール)として掲げる→チームタスクとして共有
□振り返りができるなど、成果を見える化する→社員総会などの機会創出

つまり、トップが言葉を発し、それを社員が自発的に動くプロセスを設けて、さらに振り返りができる機会を設けるのです。

休み方の重要性を意識できる「ワーケーション」

休み方の重要性を意識

「どうしても休みたくない」、「休むとモチベーションが下がってしまう」という社員の声には、ワーケーションの導入を検討するのも良いでしょう。

新しい働き方としてのワーケーション

ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語で、バケーション先で仕事するという新しい働き方です。休暇と仕事が融合した少しわかりにくい概念ですが、小学校の校外学習のようなものと考えるとよいでしょう。

大手企業がワーケーションを導入

例えば大手電機メーカーのNECは、社員研修をワーケーションで実施。秋田県の温泉地で、現地で活動する劇団員を講師に、演劇スキルを取り入れたコミュニケーション能力向上の研修を行いました。講師に漫才師やタレントを招いて同様の研修を行うなど応用の利きそうな事例です。

営業支援システムのベンダー企業であるセールスフォース・ドットコムでは、和歌山県白浜にサテライトオフィスを設けて、数カ月のスパンで内勤営業担当者が入れ替わりながら働いています。東京のオフィスを離れ、白浜というリゾート地で働くことで、社員の発想力やモチベーションを高める狙いがあります。これもワーケーションの形といえるでしょう。

全国各地でワーケーション施設

白浜をはじめ、ワーケーションの受け入れ環境を整えている地方自治体は全国で増えています。サテライトオフィスを新規立ち上げるまではいかなくとも、コンドミニアムやバンガロー、コテージを会社で借りて、社員研修などに活用してはいかがでしょうか。

ワーケーションは有給休暇扱いでないことに注意しましょう。休暇中に働かせることを認めるものではなく、有給休暇と明確に区別しなければいけません。有給休暇取得における心理的ハードルを下げるためにワーケーションを導入すると考えましょう。

リモートワーク社員向けの施策とは

コロナによりリモートワーク(テレワーク)の普及が進みましたが、特に管理職からは、部下のマネジメントが難しいという声が聞かれます。労働時間の管理に関しても、つい働き過ぎてしまうことがないよう、細心の注意が必要でしょう。

リモートワーク社員向けに行事

リモートワーク社員にワーク・ライフ・バランスの意識を持ってもらう施策としてもワーケーションは有効です。ある都市開発関連企業では、「大人の社会見学」と題して、リモートワーク社員とその家族を対象に、日本各地の施設や企業を訪問する社内行事を定期開催しています。社員のリフレッシュと共に、リモートワークにより減少した社内の交流も促す、一石二鳥の取り組みです。

ワーケーション以外にも、月に1回、ランチミーティングや会食を催し、お互いの近況を報告し合える機会を設けるだけでも効果が期待できます。このとき、「趣味の話」や「育児の話」など、ワーク・ライフ・バランスに関するテーマを設定するのもよいでしょう。

仕事の効率化は「好き」の本質に気づくこと

仕事の効率化は「好き」の本質

仕事人間と言われる人の本質を考えた時、実は仕事を通じて出会う人とのコミュニケーションが好きだったり、新しい知識やスキルを身につけて成長することが楽しいと感じているのかもしれません。または、成果をあげて会社に貢献することが喜びということもあるでしょう。

仕事が好きという人は、本当に仕事が好きなのか?

つまり、仕事が好きという人は、労働そのものではなく、働くことで感じることが好きなのかもしれません。もし、休日に人とのコミュニケーションや自己成長、社会貢献の機会があれば、休日にも価値を見いだすのではないでしょうか。

休みを必須にすることで日頃のダラダラ仕事をなくす

「休むことは無駄である」と考える社員には、休むことで組織全体の業務効率化、最適化が期待できることを伝えましょう。休暇をしっかり取り、かつ成果を出すには、無駄な行程を省いたり、最適な役割分担を行わなければいけません。つまり、休む(労働時間を減らす)ことは、生産性を高めるということ。無駄でないばかりか、むしろ会社にとっても非常に有益なことを改めて意識してもらうことが大切です。ドラマなどで、休暇に向けて日頃の仕事を懸命に進めるキャラクターが時として描かれます。休むために仕事に集中するのは、ある意味あるべき姿ではないでしょうか。

社員の年間休暇プランを立てる

休暇前・休暇明けに仕事の負荷が重くなることを嫌がり、休暇取得が進まないケースもあります。この課題に対しては、年度の初めなどに長期休暇の年間の取得計画を立てることで対応します。

年次有給休暇の取得計画を立てることで、年間を通して仕事を計画的に行う動機づけになります。また、社員に休み方を意識させることにもなります。旅行をする、親孝行をする、趣味に集中するなど、有意義な過ごし方により、人としての成長が期待できます。

このとき、社員が安心して取得計画を立てられるように、顧客や取引先情報の共有など、休暇・休業時の業務フォローアップ体制をしっかりと構築しておきましょう。これについてはスケジュール(カレンダー)の管理が主になります。以下はその具体例です。

・スケジュール(カレンダー)を部署・チームで共有し、同僚や上司・部下の予定をこまめに確認する習慣を徹底する。

・スケジュール(カレンダー)への記入は具体的に。案件名や作業予定時間など、誰が見てもわかるように記載する。

・スケジュール(カレンダー)の情報を確認した上司は、案件の優先順位や時間が適切か確認し、逐次アドバイスする。

休暇中に顧客や取引先からの呼び出しがないように、マネジメント層から社員が休む旨をあらかじめ先方に伝えるなど、社員が休暇を取得しやすい環境をつくることも大切です。

職制による新しい休み方

職制による新しい休み方

堂々と休めるメモリアル休暇

「休暇を取得するきっかけがわからない」、「休んでも何をしていいかわからない」という社員もいるでしょう。このような課題には、メモリアル休暇が解決策となります。誕生日や結婚記念日など、メモリアルデーを休暇取得のきっかけにする方法です。中でも誕生日は、どの社員にも訪れる(機会が公平に訪れる)ため、メモリアル休暇にする企業が多いようです。

休み手当など大胆な福利厚生をつくる

より劇的な変化を望むなら、大胆な福利厚生をつくることがおすすめです。旅行費用を会社で一部負担するという取り組みをしている企業もあります。他にはボランティアや資格取得などのスキルアップを対象とした支援を行うのもよいでしょう。

さらに珍しいところでは、パラレルワーク(副業)を勧める制度を導入する企業もあります。新規事業を立ち上げるなど、あくまでも自社内におけるパラレルワークですが、「仕事が趣味」という社員のモチベーションを活かせる制度でしょう。

新たな休暇制度を設けたときは、ネーミングにもこだわってみましょう。例えば旅行費用を会社が一部負担する制度でも、とあるハウスメーカーは「親孝行支援制度」、とあるゲーム会社は「ルーラ(人気ゲームドラゴンクエストに登場する「瞬間移動」の呪文)制度」と名付けました。ささいな工夫ですが、社員の興味をひくことができます。

独自のメモリアル休暇を設ける際は、自社に関係のあるものがおすすめです。例えば創業日に休暇を設けると、社員の愛社精神を促進するきっかけになるでしょう。

また、独自のメモリアル休暇は、対外的な宣伝材料、広報素材になる可能性を秘めています。Amazonではペット用品事業に注力した際、同時にペット休暇を新設することで、ペットを愛する企業であると社会にPRしました。

雇用形態の多様化をすすめる

休暇取得の促進によるマンパワー不足を危惧する経営者もいるでしょう。それでなくとも、働き手が減少している時代です。この課題に対しては、雇用形態の多様化を進めることで対処します。ただ、いきなり全てを変更するのは、社員が戸惑う可能性があるので、労使で話し合って進めることが重要です。

多様な雇用形態として、以下のようなものがあります。

地域限定社員制度

地方在住者および地方移住希望者を対象にした雇用制度。仕事への意欲はあるものの、転勤がネックとなり正社員にはなりたくないと考える人材を活用するための制度です。社員はライフプランを立てやすくなり、会社は長期にわたり優秀な人材を確保できる、双方にメリットのある雇用制度です。

シニア社員の採用

60歳以上の人材を対象とした採用です。シニア世代が備える経験やノウハウは、企業に大きな利益をもたらすでしょう。就業時間はフルタイムとハーフタイムの選択制にするなど、本人の希望に合った形で雇用契約を結ぶことがおすすめです。

キャリアリターン制度

退職社員の再雇用を促す制度です。介護や配偶者の転勤など、やむを得ない理由で退職に至った社員を対象にします。さまざまな事情があって退職したことを念頭に、地域限定社員制度のように雇用条件もフレキシブルに対応しましょう。

おわりに

社員の気力に任せて働かせる方法は、時として会社に大きなマイナスをもたらします。頑張り過ぎてしまう社員を落ち着かせ、うまくマネジメントすることも経営者の役割といえます。「仕事が趣味」と言える人は立派です。ただ、そこでいう「仕事」の本質は何なのか。そこを突き詰めることは、働き方改革を、その会社ならではの魅力ある方法で進めることにつながるのではないでしょうか。

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