
はじめに
誰でも仕事をしたくないときがあります。仕事のやりがいを見失ったり、仕事の量が半端なく多かったり。
やりたい仕事が他にあるときにも仕事をしたくないと感じるのではないでしょうか。
実は、仕事をしたくないときにしかできないことがあります。そして、それは、あなたを劇的に変えてくれるスイッチになるかもしれないのです。
本原稿では、仕事をしたくないときの対処法や仕事の考え方を解説しています。今、仕事をしたくない。月曜日の朝が憂鬱で仕方がないと感じている方にお勧めします。
仕事をしたくない理由の一番は心を束縛されること
仕事をしたくないときには、人はどんな感情を持っているのでしょうか。人間関係がよくない。安い給料で働かされている。仕事が多くて大変だ。残業が多く予定が立てられない。
これらのことは、言い換えれば、だれかが、あなたを束縛しているということです。簡単にいえば、心の自由を奪われているということ。
意識する、しないは別にして人は自由でないととても窮屈に感じる生き物なのです。でも、不思議ですよね。同じ職場で、忙しくてもやりがいを感じるときは誰でも経験しているはずですよね。
まるでゲームを楽しむかのようにあっという間に時間が過ぎてしまう。そんな体験は一度や二度でなく、みなさん何度も感じたことがあるのではないでしょうか。
でも、ときと場合によって、それがかなり違う。
オーストリアの精神科医であった V. E. Frankl は意味と目的を発見し、充足させようとする基本的努力を「意味への意志 (der Wille zum Sinn)」と呼び、これが人間の根本動機であるとしています。
仕事をしたくないのは上司にリーダーシップが足りない

もともと人は、何をするにしろ、そこに意味や目的を見つけて、それに邁進しようする生き物なのです。
人ってそんなに単純なものなの? と思うかもしれませんが、そんなに単純なものだからちょっとしたことで仕事をしたくないと感じてしまうものなのです。
例えば、上司から急に急ぎの仕事を振られると多くの人は嫌だなあと感じるはずです。特にお前の仕事だろう的な態度を取られると仕事をしたくないと誰しも思うものです。
でも、もし、上司があなたにとても期待していると感じさせてくれたり、何らかの手本を丁寧に示してくれるのなら嫌だとは感じないのではないでしょうか。
そこに、生まれるのは自律的な自発性です。あえて難しいことにチャレンジしようとする意欲です。
本当のリーダーシップを持つ上司なら、そうした配慮を行い、急な残業であっても、あなたの自由な心を支持するものです。
自分自身でチーベーションを上げるのも仕事では大事
仕事に金銭的な意味だけを教え込まれている人は、考えを改めた方がいいかもしれません。仕事とプライベートは別という切り離した考え方です。
そもそも、仕事をするのも自分、プライベートを楽しむのも自分なのですから切り離せるものではないからです。
例えば、人は働かなくても快適に暮らせるお金を相続したとしても、働き続けることを希望する (e.g.,Arvery, Harpaz and Liao 2004) という「宝くじ研究(the lottery studies)」があります。
これは仕事に重きを置いている人の傾向ですが、人が根源的に仕事に対して金銭以上の意味を持てることを示唆しています。
ヘタレ上司が気に入らないとしても、自分のエンジンをかけて、モチベーションを上げれば、仕事への意欲は変化します。モチベーションの上げ方は人それぞれ違います。
- 目標達成の時間と工程を自分で決める
- 好きな音楽を聴いて気持ちを高揚させる
- 終了後になんらかの成功報酬を決める
- 軽く体を動かしてみる
- 成功している人の本を読んだり動画を見たりする
- 自分が成功しているイメージをする
もともと人は、仕事に対して金銭以外の意味を見出すことができるのですから、そのパワーをフルに使うようにすればいいのです。
心身が疲れているときは、休むことが大事

ここまで、精神論的なことを書いてきましたが、心身が疲れているときは別の話です。人は心身ともに疲れるとパフォーマンスが落ちるどころか発揮できないのが普通です。
瞬発的にこなすことはできるかもしれませんが、決して長続きするものではありません。もし、あなたが仕事したくない理由が次のようなことに起因しているなら思い切って休むことも考えましょう。
- 育児や親の介護で休む暇がない
- 冠婚葬祭などで悩みを抱えている
- 連日仕事が忙しくて睡眠不足に陥っている
- 慢性的な体調不良を抱えている
- 上司が嫌味なヤツでやる気が起こらず、同僚はイエスマンばかり
- そもそも仕事に意味が見出せず、慢性的な不満がある
- ミスをした仕事のことが気にかかる
- 通勤だけで疲れてしまう
仕事の目的を矮小化するとやる気をなくしてしまう

仕事は人生そのものではありませんが、間違いなく人生の一部です。人は、人生を充実させたいと強く思うであり、仕事を否定すると人生を充実させたいという思いと矛盾します。
実は、仕事をしたくない理由は、潜在的な心理状態において矛盾を抱えているケースがあるのです。
心理学の領域で、人生の意味は「自分の人生が重要であると感じ、人生に意味を見出し、人生のより広い目的を見出すこと」(Steger 2012:177)、「自分の人生は価値があり、意味があり、目的があるという信念」(Czekierda et al.2017:389)などと定義されています。
上記の言葉にある人生を仕事に置き換えてもそのまま言えることではないでしょうか。
自分の仕事が重要であると感じ、仕事に意味を見出し、仕事のより広い目的を見出すこと。
もしあなたが、仕事をしたくないと感じるなら、その仕事が社会にどのような影響を与えているのか、視座をずっと高くして見下ろすのもひとつの方法です。
会社が掲げているような理念のように堅苦しいものでなくてかまいません。人を笑顔にする、喜びを分かち合う、こころからリラックスするなど、仕事の先にあることを想像してみましょう。
やる気がなくても仕事をしなければならない時の注意点

仕事のやる気が起こらず、モチベーションを上げるのが難しいときは誰しもあります。そんなときこそ、いつにも増して注意しながら仕事をしましょう。
「今日は仕事をやりたくないなあ。憂鬱だ。いっそ、休んでしまいたい。でも休めない」こういう気持ちになった時こそ、何かのミスを犯す可能性があります。それだけに次のことを想定して仕事にのぞみます。
- 集中力が低下してミスが起こるかもしれない
- 人間関係でぞんざいな態度をとってしまうかもしれない
- 挨拶や返答ではっきり声を出さないかもしれない
- 失敗するかもと思ってしまうかもしれない
- ゆっくり動いてしまう(緩慢な動きになる)かもしれない
実は、仕事でやる気が起こらず、したくないときは、上記のことを意識するだけで、気持ちが変わることが往往にしてあります。人は、備えることで心に余裕が生まれる生き物だからです。
「今の気持ちの状態ならミスを犯してしまうかもしれないな、十分に注意しよう。そうだ、チェックは同僚の花子さんに頼んでみよう・・・」。自分で予防線を張ることで、気持ちがスッとラクになることがあります。こうした思考や行動はワークエンゲージメントを高めることになります。
仕事をしたくない原因はワークエンゲージメントの不調にある

ワークエンゲージメントとは、熱意、没頭、活力の3つが満たされている状態のことをさします。
ワークエンゲージメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。エンゲージメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である(Schaufeli, Salanova, Gonzalez-Roma & Bakker,2002; Schaufeli & Bakker, 2004; 島津, 2014a)
https://ci.nii.ac.jp/naid/130007744627
ワークエンゲージメントを高めるには自己批判を自己評価に変えることと、相互協調の枠から逃れることだと考えられています。
特に日本人は、自己批判の傾向が欧米人に比べて強いと言われています。これは子供の頃から他人に迷惑をかけてはいけないという刷り込みのせいです。他者の目で自分を見るために自己批判的になりがちなのです。自己批判は、悪いわけではありませんが、強すぎると次の一歩を出しづらくなります。
相互協調も悪いわけではありません。10年ほど前に言われた「空気読めよ」の世界観ですね。例えば、いきいきと働いて見せることはいいことなのに、周りの空気に忖度してそういう態度をとらないことも日本人にはありがちです。
まわりに忖度するメリットと自分の思うことを表現するメリットは長期的な視点で考えましょう。人は、どうしても今起こっていることに目を向けがちになってしまいますが、1年後、3年後に良くなると思うなら忖度のたがを少し緩めるくらいしてもいいはずです。
自己批判を自己評価として肯定的に捉える、相互協調を緩めにして胸を張って行動するのが、ワークエンゲージメントを高める秘訣です。
思い切って元気よく挨拶する、ちょっとしたことで人に声をかけるなど、普段の行いを変化させましょう。最初は、周囲も戸惑うかもしれませんが、3ヶ月もすると「あなた、変わったわね」と他人が見るあなたの印象そのものが変わります。
そうなってくると、やっかむ人が出てくるかもしれません。そんな時は言い訳などはいっさいする必要はありません。「最近、変わったよね。何かあったの?」などと聞かれたら「そう? 毎日、適当に楽しくやってるよ」とシンプルに答えましょう。
そもそも仕事をしたくないときはどうすればいいのか?
そもそも仕事をしたくないときって誰しもあります。気分が乗らない、休み明けでダルいなど、何かわからないけれども仕事をしたくない気分です。
- そもそも働くのが嫌いで嫌いでどうしようもない
- もともと働いている職場環境や社風があっていない
- 仕事に対して異様に給料が低い
- 会社は売り上げやお金のことしか考えていない
- がんばっても成果を認めてくれない
- 40代、50代の社員がだるい、ため息が多い
- 仕事をする時間が長い
- 人間関係でめんどくさい人が多い
- 仕事の内容がまったく好きになれない
- 仕事の目標が見えてこない
もし、あなたがそもそも仕事をしたくない理由が上の項目に当てはまるのなら、転職が解決策として考えられます。職場の雰囲気になじめず、居場所がないと感じたり、仕事を与えてもらえずに放置されている状態なら次の職場を探すのが無難です。
今の時代は自分を大事にするのが、健康で幸せの近道だから。働き方も変わってきていますよね。時短で働くこともできれば、在宅勤務で働くこともできます。
また副業が解禁されているので、副業を始めるのもいいでしょう(ただし雇用契約や社員規定に反しないように)。
転職や副業を始めることは大げさに感じるかもしれませんが、そうした活動をすることで将来の展望が開けたり、自分の新たな可能性に気づくこともあるはずです。ネガティブな気持ちをポジティブに変えるきっかけになるかもしれないのです。
仕事がしたくない原因で転職する際にチェックしたいこととは

もちろん、やみくもに転職することはおすすめできません。希望することを明確にして、次のようなことをチェックして転職先を探しましょう。
- 仕事内容に合った報酬がしっかりしている
- 会社の中での人間関係がいい
- 休暇や有給の取得が明確になっている
- リモートワークができる
- 仕事がマンネリ化しない仕組みが会社にある
- 適正な評価を受けられる
- 苦しいと思わずに仕事ができる
仕事の報酬は高い方のが理想ですが、金額ばかりに目をやると落とし穴がまっています。仕事の内容にあっているかどうかを基準にします。
会社の中の人間関係は入ってみないとわかりません。でも、面接時にすれ違う人が挨拶する、社員の構成年齢のバランスがいいなど、確認できるできることはあります。
休暇や有給に関しては取得率を質問してみましょう。そんなことを聞いたらマイナス効果があるかもしれない・・・。そう感じてしまうかもしれません。
でも、きちんとした会社なら有給の取得割合や休暇制度をを堂々と表に出しているはずです。聞きにくいことは、事前に求人情報を調べたり、転職エージェントのカウンセラーに質問するのもいいでしょう。
リモートワークも今は当たり前になっています。仕事の新しいメリハリのつけ方として考えている人もいるのではないでしょうか。
一般的な会社には経営計画が存在し、それに基づいて取り組みがなされています。そういう会社は、同じ仕事を繰り返しているように見えても変化するものです。
会社で働く上で適正に評価されることはもっとも重要なことです。評価基準についても明確であることが転職先には理想と言えます。ただし、中小企業の場合、明確な基準がないケースもあります。
転職後に用意されるポストや昇級例、役職例などの情報をもとに評価に関する判断をします。
転職でもっとも大事なのは苦しいと感じない仕事であること。自然体で長く続けられることを基準に仕事を選ぶことが重要です。好きや給料のよさというより、実はここが一番肝心です。
やっていて苦にならないのは、自分のスタイルに合っているということです。むしろそれがあなたのスタイルなのです。
まとめ
仕事をしたくないときの対処法として、モチベーション、休むこと、意識の持ち方、ワークエンゲージメント、転職などについて説明しました。みなさんにとっていい仕事との出会いがあるように。