残業時間を減らせば、社員も経営者もハッピーになる

仕事のスキルアップ
組織風土を変えて長時間労働をなくす方法
(出所)ILOデータベース。2012年における週49時間以上の長時間労働者の割合。
資料:「選択する未来」委員会 資料 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/15/backdata/01-01-04-007.htmlより

はじめに

上の表が示すように日本は長時間労働者が世界の国と比べて突出しています。従業員の雇用促進や定着を図るには、残業時間を減らすことがひとつの目玉となります。

とはいえ、残業や休日出勤がなかなか減らないと悩んでいる管理職の方や経営者の方がいると思います。その原因は、長時間労働が評価される組織風土があるからかもしれません。今回は、組織改革から残業時間を減らす方法をまとめました。これを実施すれば、従業員の雇用促進や定着になり社員も経営者もハッピーになり、社会貢献につながります。

社員の行動パターンを再評価する

残業時間が減らないのは、「成果を出すためには仕方がない」、「長い時間働けば評価されるはずだ」と社員が考えているからかもしれません。しかし、長く働いたからといって成果が出るとは限りません。むしろ、勤務時間が長くなれば集中力が欠けて、生産性が低下する可能性もあります。

長時間労働を是正するには、社員のモラルや働き方、評価、処遇に関する意識を調査し、施策検討の材料とすることが大切です。この調査は、各部署の各メンバー1人ひとりに対して行うことが理想です。どのメンバーが残業や休日出勤を続けているのかを明確にすることで、残業の多い部署やチームを特定しやすくなるからです。特定のチームに残業が偏っていることを知り、その要因を分析できれば、是正に向けた施策検討もたやすいでしょう。

残業が少ない部署やチームの特定も、とうぜん可能です。その場合は、なぜ残業が少ないのかを分析し、そのナレッジを管理職やマネージャークラスで共有しましょう。

効率的な業務で評価軸を作成する

「長く働けばより多くの利益を会社にもたらす」という考え方も、長い残業時間が組織風土に根付く理由でしょう。しかし、この考え方は先入観による誤りといえます。企業の成長は、生産性(=労働による成果÷労働量)の高さに比例します。利益を上げるならば、労働時間を伸ばすよりも業務の効率化を図るべきと、現在多くの企業が考えています。

「時間」から「生産性」へと社員の意識を転換させるには、「時間あたり成果」を人事評価項目に加えることがおすすめです。時間ではなく生産性での評価へと制度設計しなおすことで、社員の行動パターンの変化を促すのです。

ただし、一方的に新しい評価制度を押し付けると現場の士気低下や業務の萎縮を招きかねません。特に、長年「時間」を評価基準としていた組織では、「生産性」を重視せよと急に言われても困るだけでしょう。そこで、会社としても生産性を高めるための施策を打って、社員の戸惑いを解消しましょう。以下は施策の一例です。

・現場責任者による生産性向上会議を設ける
具体例 業務の見える化推進チームを発足して、業務の洗い出しを実施。二重業務の削減を行った。

・社内手続きや決済をシームレス化す
具体例 経理担当でキャッシュレス化を実施。これまで現金でやりとりしていた経費精算を振り込みで決済できるようにした。

・一般社員からの要望を検討、実現する。
具体例 一般社員から意見やアイデアを広く募集。作業順番の変更や動線に沿った部品・商品の配置などを実行し、生産性の向上に結びつける。

生産性重視の働き方は、リモートワーク(テレワーク)との親和性が高いことも特徴です。既に外出先でも作業ができる環境の整備に着手している場合は、「時間あたり成果」の評価制度の導入をぜひ検討してください。

総合評価と別の報奨制度などを設ける

生産性に基づいた人事評価は、総合評価と分けて考えることがおすすめです。営業担当やカスタマーサービス担当など、所定外労働が避けられない部署もありますし、自分の業績だけを考える社員が増えてしまうリスクがあるからです。
生産性に基づく評価は賞与への反映にとどめるなどして、所定外労働の増減が基本賃金に影響しない評価制度とすることも有効です。例えば、業務改善につながる提案や取り組みを行った個人・グループにインセンティブをつけるなどが考えられます。

自分本意の社員が増えるリスクへの対策では、全員参加型経営の導入が効果的でしょう。
「ミニカンパニー制」として全員参加型の経営を実施している製造業会社では、工程やセクションごとに9つのチーム(ミニカンパニー)をつくり、独立採算制の活動を行っています。チームリーダーを中心にメンバー全員で協力し、チーム目標の達成や生産性の向上を目指すのです。売上や経費、利益、時間あたり成果などの日次・月次管理も、チームごとに行います。

このように、チームで生産性向上に取り組めば、「自分だけ良ければいい」という考えもなくなります。

フレックスは夜型勤務から朝方勤務へ

残業時間を減らすなら、就業時間にもメスを入れてみましょう。例えばフレックスタイム制の見直しもひとつの方法です。自由な働き方の象徴にも思えるフレックスタイム制ですが、コアタイムぎりぎりに出社し、夜遅くまで勤務する社員を生み出す原因でもあります。日々の勤怠をそれぞれの裁量に委ねた結果、一部の部署または社員で長時間労働が横行している企業は少なくありません。

もちろん、働き方改革としてフレックスタイム制を導入し、成果を挙げている企業も多くあります。ですが、もし、次のような悩みを抱えている場合は、フレックスタイム制の見直しをしたほうがよいでしょう。

・社内会議のスケジューリングが(導入前に比べて)難しくなった
・出勤時間のばらつきによって担当者不在の状況が増えて、業務連携に支障が生じた
・部下の労働時間の管理が難しくなった

繰り返しますが、フレックスタイム制が「悪」ではありません。育児をはじめ家庭の事情を優先できる働き方として、フレックスタイム制は有効です。ただ、これによって長時間労働が横行し、家庭にいる時間が短くなるのは本末転倒ではないでしょうか。

そこで、例えばコアタイムの時間帯を1時間早めるなど、朝型のフレックスタイム制にしてみましょう。朝型の勤務を推奨し、退社時間を早めることを促せば、長時間労働の改善につながります。

とある情報通信会社では、社内に「クラブハウス」と名付けたスペースを設け、18時半以降の業務はそこで行うというルールにしています。自分のデスクから環境を変えることで残業前の気分転換になりますし、「早く帰ろう」という意識にもつながるからです。

各部門の休み方を変える

一斉休暇でなくてもいい
休みは一斉でなくてもいい、むしろ個別対応の柔軟性が必要

会社で働く人は、それぞれ違った家庭環境を持ち、また雇用形態も正社員、派遣、アルバイトなど異なる場合があります。部署によっては、大きく働き方が違うケースもあるでしょう。

24時間稼働している工場、営業時間が長い店舗、それらを統括する本部など、長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得が一律の仕組みでは、成り立たない場合もあります。

そうしたケースでは数値目標をトップがしっかり発信すると同時に働き方を部署や部門ごとに変える他、休みが取りやすいように特別休暇を取り入れるなど、それまでしなかったことを制度化するのも手。実際にさまざまな業界で働き方の改革に取り組みがなされています。以下にその例をあげます。

製造業の事例まとめ

本原稿は厚労省の働き方改革特設サイトの製造業の事例から一部を抜粋しまとめた情報です。

●管理部門にフレックスタイム制を導入する

●勤続年次に応じたリフレッシュ休暇を定める

●年次有給休暇の積立制度

●時短勤務(有給の時間単位活用)

●年休の取得目標「年間11日以上」の設定、目標達成に向けた取組の推進

●二交代制からシフト勤務に変更

サービス業の事例

本原稿は厚労省の働き方改革特設サイトのサービス業の事例から一部を抜粋しまとめた情報です。

●経営トップが定期的にメッセージを発信

●全支店で、働き方プロジェクト委員会を立ち上げてバックアップ

●ダイバーシティ改革として女性役員の割合を引き上げる

●働き方、休み方の事例や情報を共有するコミュニティサイトを設ける

●テレワークの導入や部署によってフリーアドレス化

●集中トライアル時間の設定(電話受け業務をしない時間)

●残業時間の可視化

おわりに

長時間労働を認めている組織は、長い時間働くこと以外の評価軸を決めていないといえます。だからこそ、生産性という新たな評価軸を経営層から提示しなければいけません。また、自分だけ目立ちたくないという理由から、長時間労働の組織風土に甘んじている社員もいるでしょう。そんな社員が堂々と長時間労働をやめられるように、やはり会社の制度から変えていく必要があるのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました