
選別受注とはサービスに応じて顧客をグループ化すること
本記事では「選別受注」に焦点を当て、自社が優先すべき業務を選択・集中する方法について解説します。選別受注を成功させる最大の鍵は、社員の「行動内容」と「得られる成果」の可視化にあります。
選別とは、自社の強みや提供サービスを明確にしたうえで、それに見合った顧客へ適切にアプローチすることです。顧客を一方的に選り分けるのではなく、提供価値に応じて正しくグループ化(区分)する考え方が根底にあります。
この取り組みを進める過程では、自社に合わない案件を意図的に見送り、顧客にならないケースも生じるかもしれません。しかし、それこそが収益性を高める第一歩となります。
主にBtoB企業を想定していますが、本質的な考え方はBtoCビジネスでも同じです。企業の利益率や生産性を劇的に向上させたい経営者、部長・課長クラスなどマネジメントに携わる方は、ぜひ参考にしてください。
そもそも選別受注とは

選別受注とは、企業が自社のリソースや収益性を考慮し、受託する案件を適切に選別する経営手法のことです。管理職一人ひとりが会社の経営方針を熟知し、選別受注の重要性を正しく理解することが不可欠になります。
選別受注を導入することで、具体的に以下のような4つのメリットが得られます。
- 収益性の高い案件に特化できる
すべての依頼を無条件に受けるのではなく、利益率の高い案件に絞って受注することで、会社全体の収益性を向上させられます。無理な案件を回避できるため、サービス品質の維持にもつながります。 - 経営資源の最適化を図れる
限られた人員や設備などの経営資源を、より高価値な案件へ集中的に投下できます。これにより、組織全体の生産性と資源効率が最大化します。 - 特定の取引先に対するリスク分散ができる
一部の大手顧客や特定の案件に依存するリスクを回避できます。バランスの取れた受注ポートフォリオを構築でき、経営基盤の安定化に寄与します。 - 不毛な価格競争を回避できる
採算の取れない安値案件を適切に断り、適正価格での受注が可能になります。利益を削る価格競争に巻き込まれずに済みます。
一方で、選別受注にはいくつかのデメリットや懸念点も存在します。
このように、メリットとデメリットの双方を十分に検討したうえで、自社の経営戦略に合致するかどうかを判断する必要があります。選別受注の最適なバランスは、業種や市場環境によっても異なります。
選別受注は利益重視の経営を実現する非常に有効な手段ですが、過度に選り好みすると事業成長の機会を逃しかねません。自社に最適な選別基準を設けることが肝心です。
売上と行動の二つを評価する仕組みをつくる

利益や生産性の向上が思うように進まない企業は、売上金額のみを活動目標に置いているケースが多く見られます。企業活動を改善するには、「売上目標」と「行動目標」の2つをセットで設計することが重要です。
顧客に対してどのような活動を行えばどのような結果を生み出せるのか、そのプロセスを定量化しなければ、営業活動が個人能力に依存し、組織内にノウハウが蓄積されません。
働き方改革を進めながら成果を最大化するには、人材の有効活用が不可欠です。しかし、個人のスキル頼みでは、得られる成果がケースバイケースとなり安定しません。
顧客にはそれぞれ異なる課題や特徴があります。それらを正しく把握して適切な対策を講じられるよう、営業の行動量と行動内容を可視化しましょう。
顧客の選択と集中が必要な理由

【顧客の選択とは】
「選択」とは、自社の限られた経営資源の中から、どの顧客にリソースを優先的に配分するかを決定するプロセスです。
選択を行う際の判断基準としては、主に以下の項目が挙げられます。
企業はこれらの項目から総合的に顧客をランク付けし、優先すべき顧客を抽出します。そして選定外となった顧客に対しては、効率重視の対応へシフトしていきます。
【顧客の集中とは】
「集中」とは、選定した優先顧客に対して経営資源を重点的に投入することを指します。
集中の具体的な施策例は以下のとおりです。
優先顧客に対して重点的なリソースを割くことで、強固な信頼関係を築き、収益性の高い継続取引を実現できます。
顧客の選択と集中は、資源を無駄なく活用するための強力な経営戦略です。既存顧客の整理が必要になるなど実行上の課題もありますが、戦略的な顧客管理は企業の収益力を飛躍的に向上させます。
ネットの発展で顧客は待ってくれない時代に
現代において、なぜ顧客対応に多くの人手が必要とされるのでしょうか。理由は明確で、顧客が待ってくれなくなったからです。
インターネットの普及により、顧客は代替品を容易に探せるようになりました。電話1本を取りそこねただけで、即座に競合他社へ乗り換えられてしまうリスクが存在します。
優秀な営業部署ほど働き方改革はうまくいかない?
優秀な営業担当者ほど、一回の機会損失の重みを熟知しています。そのため、定時後に顧客へ足を運んだり、夜間の電話対応を行ったりと、自発的にハードワークをこなしてしまいます。
もし社内の営業部署で働き方改革が進んでいないなら、それは優秀で情熱的な営業マンが多い裏返しである可能性が高いといえます。
優秀な人材の情熱は、より良い顧客に注ぐべき
個人の熱量に頼るだけでは、会社全体として大きな機会損失を生み出している場合があります。
顧客には「より良い顧客」と「間違った顧客」が存在します。良い顧客とは、少ない対応コストで大きな利益をもたらす顧客です。一方、間違った顧客とは、利益が出ているように見えても、頻繁なサポート対応など隠れたコストが膨大にかかる顧客を指します。
優秀な営業マンが「間違った顧客」に工数を奪われているとすれば、真に大切にすべき「良い顧客」に注力する機会を失ってしまいます。だからこそ会社として、優れた人材の力を良い顧客へ集中させる仕組みを作る必要があります。
優秀な営業担当者のリソースを、間違った顧客に注力してしまうと、より良い顧客との機会損失につながる
良い顧客を選んだからといって、管理の手間が減るわけではありません。1億円の利益を生む1社と、100万円の利益を生む100社を管理する労力は、本質的に同じくらい大変であることを理解しておきましょう。
選別受注制の導入で仕事のランク付け

仕事のランク付けとは、社内の多種多様な業務を重要度・難易度・必要スキルなどの基準に照らし合わせて整理・分類することです。
業務レベルを可視化することで、適切な人員配置や人事評価、育成計画が立てやすくなり、組織運営の最適化が進みます。
評価に納得感を持たせることで、社員のモチベーション向上や業務効率化を加速させることができます。
継続受注型の業態なら、顧客の生涯価値を
最適な選別基準はビジネスモデルによって異なります。サブスクリプションのように継続契約が重視される業態では、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)が主な評価基準となります。長期的に自社へもたらす総利益を軸に判断します。
単発受注型の業態なら、採算性を基準に判断
建設業などの単発受注型ビジネスでは、案件ごとの採算性や納期管理が重要な基準です。人件費や原価を正確に算出して受託可否を判断します。なお人件費の試算時には、社員が有給休暇を消化することを前提とした原価計算を行いましょう。
単発受注型であってもLTVの視点は欠かせません。最初は小さな案件であっても、良好な関係を築くことで将来的に大型案件へ発展する事例があるためです。発注元の事業規模や成長性を見極め、将来性を含めて総合判断しましょう。
顧客(案件)の選別は、できる限り全社的に取り組む
顧客や案件の選別は、必ず全社体制で取り組みましょう。経営層や企画部門だけで判断を下すのは危険です。
現場の運用コストやサポート対応の負荷など、数値データに表れにくい隠れたコストが存在するためです。現場の声を吸い上げなければ正確な顧客評価はできません。
さらに、選別受注を導入すると各部署の日常業務や役割自体が変化します。そのため、全社的な合意形成が必要不可欠となるのです。
継続受注型の業態はライフタイムバリューを、単発受注型の業態では採算性や納期を基準に選別受注する。選別はなるべく全社的で取り組む
選別受注制を全社的に取り組むべき理由

選別受注制の導入で各部署の役割が変化する
優先顧客を選択してリソースを集中させる取り組みは、長期的関係を築く戦略に他なりません。そのため、短期的な対応に追われていた各部署は、長期的視点に基づいた行動へ変革する必要があります。
部署ごとの主な変化は以下のとおりです。
営業部署
製品部門(製品管理および技術・開発・製造)
カスタマーサービス部門
目標の設定方法も柔軟な対応が求められる
選別受注は、自社が顧客を選ぶと同時に「顧客から選ばれる会社になる」ための取り組みです。
したがって、営業目標の設定も自社都合のトップダウンではなく、顧客視点および現場の実情に基づいて設計する必要があります。管理職の意見を反映させ、無理のない目標を立てましょう。
営業活動量と行動内容を定量的に計測・評価できるように設定すれば、PDCAサイクルを円滑に回すことが可能になります。
また、目標設定期間も月次だけでなく、繁忙期・閑散期などの季節変動に合わせてフレキシブルに運用することが成功のポイントです。
選別受注では長期的視野と現場・経営の実情に即した判断が重要
時間単位での年次有給休暇の付与制度で休みやすい環境を構築
高価値な顧客が増えると、複数名でのチーム対応や他部署との連携機会が増加します。同時に緊急案件への対応も増える傾向にあります。
その結果、「周囲に迷惑がかかる」「仕事を抜け出せない」という理由から、有給休暇の取得率が下がるリスクが生じます。
この課題に対する有効な解決策が、「時間単位の年次有給休暇制度」の導入です。1日単位ではなく1時間単位で休暇を取得できるようにすることで、業務への影響を抑えつつ柔軟に休める環境を整備できます。
時間単位での年次有給休暇の付与制度でチーム活動への影響を最小限に
閑散期は顧客対策に力を入れる
理想的な業務運用は、繁忙期と閑散期の平準化を図ることです。顧客の予算都合等により平準化が難しい場合もありますが、建設業界(国土交通省が進めるi-Construction)をはじめ、官民で平準化への取り組みが進んでいます。
参考 i-Construction(国土交通省)
繁忙期と閑散期が分かれている場合は、閑散期を「次の繁忙期に向けた準備期間」と位置づけましょう。この時期を利用して顧客ニーズのヒアリングやサービス改善を行うことで、事業成長のヒントを得られます。
経営の理想は、繁忙期と閑散期の平準化を図ること
選別受注に関するよくある質問
おわりに
選別受注を軸に、営業活動をはじめとする自社ビジネスの仕組みそのものを改革していく方法についてお伝えしました。働き方改革を成功させる鍵は、組織全体の生産性と利益率を高めることにあります。選別受注をひとつの契機として、より強固なビジネスモデルへの変革に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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